母、岩魚を掛ける

2008.07.06 Sunday
 母:「ねぇねぇ、釣り行こうよ、釣り。」
 子:「どこ行くだ?」
 母:「奈川の○なちゃん(ムスメの友達)の所。家の裏が川だから」
 子:「じゃあ行く。」

 ・・・中学生になってからそんな程度のテンションのわがムスメだが、やっとこさ親子はマトモな渓流釣りへGO!
 ムスメの友達のお父さんでもあり、旅館のご主人で板さんでもある友人・スミちゃんは釣りもベテラン。
 子供の頃から家の前を流れる川に浸かって育った彼にガイドしてもらって、今日は安心・無駄なし・ラクチンな川遊びなのだ。

 ス:「最初に入る堰堤は人気ポイントだから、集合朝4時半ね。」
 私:「4時半!?・・・・努力だけはします。」
 しかし前夜、積み込み中にエサ入れが一個しかないことに気が付き、夜中にあわてて制作してたら1時過ぎ。そして前夜のうちに握っておいたオニギリを持って車に乗り込みスミちゃんに打ったメールは

 【ごめんなさい、やっぱり遅刻します。今出ましたAM4:30】


  ・・・・・・・・
 朝ごはんのオニギリをぱくつきながら車をブッ飛ばし、5時をちょいとまわった頃、奈川に到着した。
 ラッキーなことにおなじく寝坊したらしいスミちゃんと無事待ち合わせ、堰堤の上へ。
 しかし、やっぱり奈川は涼しい!川に浸かると水はとても冷たく、涼しいを通り越して、寒い。
 堰堤で竿を出すなんて初めてなんだけど、前日までの雨で川は増水していて、けっこう押しが強いんである。
 ムスメは「コワいから、ここでいい。」と降り口のハジッコで竿を伸ばしている。

 さてさて!!今日は愛ちゃん・ねこみみさんからいただいた竿が両方とも、本格的??渓流釣りにデビューの記念すべき日。これのおかげにこうやって二人で川で遊べるんだよね。ありがたいことである。

 本日のエサは私はミミズ、ムスメは相も変わらずイクラ。
 食べるのも好きだがエサにするのも好きらしい。
 そんなにイクライクラって言ってると、朝起きたらイクラになっちゃうぞ。たまにはミミズとか川虫を使え!
 「絶対イヤ。あんなもん、持てないもん」イクラは高いのに・・・小遣いから引くぞ!
 なんて言うとじゃぁ釣りはいいよもう、なんて言いそうなんでそれは冗談である。


 竿は6メートル、仕掛けは天上糸が06、ハリスは035。
 スミちゃんと事前にやりとりしたメールは
 ス:「やっぱり来るからには釣ってほしいからね〜。堰堤では大物狙いだから、仕掛けは最低でも06ね」
 私:「ええ〜素人だしぃ通しで06じゃ、竿が折れちゃったりするかも(とらぬ狸の皮算用)いいよ、上だけ06、ハリス035で」
 大物?まっさかぁ〜ムリムリ、と奇麗な景色を眺めながら竿を出すことしか考えていない、私なんである。


 作ってきた仕掛けにスミちゃんにいただいた重いオモリを足し、目印を高く上げる。堰堤の釣りの仕掛けやエサの流し方を教えてもらって、さぁ、釣り開始!
 エサのミミズは食いがいいという細いもの。
 沫の切れ目に入れたミミズは堰堤から流れ落ちる水に巻かれて一度水中深く沈み、回転して下の堰堤へ向かって流れていく。

 ス:「底にいるからね。」
 下へ入れないとダメ、ってことか。あとはどこで喰うんだろうか?私には「アタリ」がまだわからない。堰堤から落ちる流れが立てる白沫を見ていると、食いつこうとするとこの辺りかな、と思うのは堰堤の中心寄りの沫の切れ目だ。
 当たっているのか外れているのかはわからないが、自分なりに想像してみる。
 さしもの魚もアワブクだらけの水中よりも、アワの切れ目に巻き上がるエサのほうが取りやすいんじゃないだろうか。と、すると、一度アワの中に落として、浮き上がる時が狙い目だったりして。いや、そこから流れて行く時かな?

 スミちゃんが端に移動して、私たちに良い場所を空けてくれた様子。有難く真ん中に入らせてもらって、そんなことを想像しながら竿を持つ。
 自分の想像が外れていたとしても、川の中にいるであろう、ヒラヒラと水の中を上ったり降りたりしている魚を思い描くのは楽しい。
 と、いうかそんなことでも思い巡らしながら目印を見ていないと、飽きちゃう私である。
 そして、上げてみるとミミズが半分になっていたり、という事が何度もあって、そうか〜いるのか、いるんだな!!!とチョッとやる気モードに。
 一回刺しただけのミミズって、長くてブラブラしていて、このブラブラだけ齧られて食い逃げされたりしない?と思ってミミズを三回畳んでハリに刺してみた。かなり不自然だが、これなら食いついたらハリ、である(笑)
 さぁやるぞ〜!・・・寒いけど。

 落ち込みの沫の中に落としたミミズが一度流れに乗って巻き上がり、下の堰堤に向かった時、目印が沈んだ。あ、これはもしや!と竿を立て気味に引いたら、重いじゃ〜ん!
 よっ、ともう少し引き上げて見たら、魚の頭が出た。・・・あれ、デカイ?ちゃ、ちゃんと掛かってる??
 
よっしゃ〜〜タモタモ!・・・ってこんな高低差のある場所でどうすれば(今さら)???というか、後に手を廻したら腰にタモが無い!?!
 そうか、さっき、上の堰堤から移動する時何かポチャン、っていったのはあれは私の腰に挿していたワンタッチ・タモが落ちた音・・・(TT)
 つけようつけようと思いながら、紐をつけていなかった私の失態である。
 いいや、どっちみちタモがあっても私にはどうにもならん!!
スミちゃん、ヘルプ!!タモ無いんだよ〜!!

 すぐに気づいて駆けつけてくれたスミちゃんが
 「抜いちゃダメだよ!アワのところでバレちゃうからね、そのまま向こう岸に向かって寄せて行って」
 と竿を持ってリードしてくれる。
 岩魚だ。大きいかも・・・それが不思議なくらいに、大人しく岸辺に引かれていく。
 「オレが降りてタモに入れるから、そっちへ寄せてね」と言ってスミちゃんは強い流れを走ってゆきヒョイと太い倒木を跨ぐと堰堤を飛び降りて、タモを構えてくれた。
 「よしよ〜し!獲ったよー!!」 
 おお〜、岩魚じゃん!デカイし!!
 「尺あるぞ、こりゃ!いやぁ〜よかったよかった、やったなー!!」と、釣った本人よりも嬉しそうなスミちゃん。
 私は、と言うと掛けただけで、その後誘導から取り込みまで全部スミちゃんにやって貰っちゃって、どちらかと言うと‘竿を持ってただけ’という感じで、‘釣ったどー!’と言う感覚はないのだ。言うなら‘二人で協力して捕獲した’って感じである。
 しかし、堰堤とは言え川で初めてマトモに竿を出して、大きい岩魚が獲れるなんて、まったく、予想だにしていなかった私。やっぱり名ガイド・スミちゃんがいてくれたお陰だ。
 ・・・でもこの岩魚で、私の釣り運は総て使い果たしたかも・・・。

 スミちゃんがストリンガーをかけて、水に岩魚を入れてくれた。
 今川から上ったばかりの魚・・・目が動いている。
 ヒレが動いている。
 背から腹にかけての斑点模様には透明なグラデーションがかかり、朝の光に反射し輝いている。
 「わぁー、きれいだねー!」頭の上から降ってきた明るい声に私は驚いて、振り返るとムスメが笑っている。
 水溜りでゆらゆらと尾を振る岩魚を見て彼女は目を輝かせている。
 でかいねー、とかすごいねー、じゃなくて奇麗だと言ったムスメ。ウソのつけないムスメの口から出た、素直な感想だ。
 放流された稚魚がダムで大きく育ってここまで登ってきたものらしいが、ムスメが川の中にいた魚を見て、奇麗だと言ったことが嬉しい。川には生き物がちゃんといて、それを奇麗だと感じてくれたことが、私は嬉しい。
 よっしゃぁ!今日の目的大部分はこれで達成!良かった良かった、獲ってくれてありがとう!スミちゃん!(T▽T)!!
 これをきっかけにやる気が出たのか、自分から行きたいと言ってスミちゃんに堰堤の奥まで連れて行っていただいくムスメ。
 私はと言うと、獲って貰った魚が想像を超えて大きすぎたのと、ムスメの言葉に感動したので良い意味でお腹がいっぱいで、早くも堰堤は御馳走さまモード。
 でもムスメにもなんとか釣らせようと、がんばってくれているスミちゃんの気持ちが有難い。そしてムスメも頑張っているが、掛からない。
 私は一度小さな魚を掛けたが、沫のところで釣り落としてしまってからは、掛からない。
 さっきの岩魚を掛けたときに竿を立てようと腰を落として下半身がびしょ濡れなのでますます寒い。

 ス:「う〜ん、もう時間も時間だから、景色の良い場所へ行くか!」と、いうことで場所を移動。

 おっとその前に・・・・スミちゃんと私は携帯を取り出し、手分けをしてこれまで私とムスメがお世話になった方々へ速報携帯メールを画像添付で打ちまくる(笑)。
 竿をいただき、ベストをいただき、エサ入れをいただき、ビクをいただき、そして川でご一緒していただき釣りを教えてくださった皆さん。
 初心者ながら、今日私は川の中の魚の顔を拝むことができました。それもトシはわかりませんが、オトナの岩魚です。
 スミちゃんのお陰で、無事に捕獲することもできました。本当にありがとう。
 途中、スミちゃんのご友人のクリント・イーストウッドに似たダンディな釣り人に出会い、クリントさんが釣った私好みの塩焼きサイズ岩魚を分けていただいたりしながら、水の多いこの日でも、なんとか入れそうな場所を探す。
 そうそうこれこれ!こんな場所に来たかった!
 ・・・・ってアレ?どっかで見たような景色。・・・もしかして、去年ムチャクチャ場違いだった私が、釣りのOLMで20分ばかり竿を振り回した、あの場所かしら。・・・でも水が多いな〜。ゴンゴン流れてるぞ(汗)!釣れるんかい!?
 竿を入れやすい良いポイントへとスミちゃんに連れて行って貰い、その場でしばしコーチしていただくムスメ。
 私の目の前はこんな感じ・・・。ムリムリ・・・。
 ま、それでもやるか。え〜と 堰堤ではポチャンでよかったが、飛ばさないと良さ気な所に届かんぞ。エイ!・・・・あれ。そんな手前じゃなくて。エイ!!あれ?どこ行った?(TT)
 ムスメを見ると、相変わらず上から気持ち良さそうに振りかぶっている。空中で糸はフワフワと幾重も曲がりを作ってはいるものの、ちゃんと「オ!そこそこ!」って場所へイクラはぽとんと落ちている。
 ・・・どうやるだ?それ。
 と、真似しては見るが、あれ?仕掛けがないと思ったら、竿にミミズが(TT)

 ・・・こりゃ、私にゃムリだ。と、下手くそな母は、下手(したて)に出る(振る)のだった。


 景色が良く、水は多いものの奇麗で、石に腰掛けたりしつつ、釣りをするムスメを眺める。
 楽しそうである。「あ、なんか来たよ!」「食い逃げされた〜!」と、釣れないものの飽きた風も無い。
 暫くして、ウグイを釣り上げた(ハリ外しは、相変わらず母である)。
 おお!以前のハヤより大きいぞ!しかも口掛りでスポンと外れた!
 「なんかメタボな魚だね〜、おなかがパンパンだよ!」笑いながら言うムスメ。そうだね魚の形もいろいろだよね。
 かわいいなあ〜。ウグイだって泳いでいる所をじっと見ていれば、可愛いもんである。
 なぁんてノンビリ写真を撮っていると、「釣れた〜!」おお!今度はヤマメだ!!
 ハリも飲まれず、やはりお見事な口横っちょ掛りである!

 ・・・子供だけど。
 「奇麗だね〜!」これがヤマメだよ。斑点が可愛いね〜。
 色も模様も奇麗だったので、カンタンに石を置いて生簀もどきを作って放してみたら、石に頭を突っ込んでしまって、コノ〜恥ずかしがりやなんだから〜とニヤニヤしながら一人でブツブツ言っていたら、「いや隠れたいんだろう当然。」とムスメに突っ込まれてしまった。

 11、2センチくらいの稚魚だが、ムスメが初めて釣ったヤマメだ。愛しいなぁ〜(連れて帰りたいくらい)。

 私は暫くの間、足元で‘頭隠して尻隠さず’のヤマメちゃんを気の済むまで眺めてから、(ムスメはすでにやる気モードで竿を振りっぱなし)石を外した。
 バイバイ。これを教訓に、逞しい良いオトコ(良いオンナ)になってね。

 時間はあっという間にお昼を回って、お腹が空いてきた。
 と、いうことで、今日はここまでである。
 「今夜はクリントさんのイワナを塩焼きにするから、このでっかいの、御礼に皆で食べて」と言う私に、スミちゃんが「だったら、これからそれ、みんなで食うか!」とご好意で厨房で料理してくださることに。
 クリントさんとスミちゃんは、厨房で手際よく尺イワナと塩焼きサイズを調理にかかる。私とムスメはと言うと、ボウルを出したり、洗ったりと全くのお手伝いである。
 男の方に料理していただくなんて、いつ以来なんだろう!「さ〜宴会だ、宴会!!」とスミちゃん。
いやぁもう、↑これって、サイコ〜に幸せ!!!クセになりそう♪♪

  ・・・これでビールが飲めればなぁ〜言うことなしなんだけどなぁ〜。
 尺イワナはから揚げと肝焼きですべて食べつくす。
 川魚はから揚げ、と言う位にから揚げ好きなムスメ、「おいしいよ〜!」と頭も骨もしっかり食べていた。

 クリントさんのイワナも加え、ちょうど三人分ほどの肝焼きができて、スミちゃんとクリントさんはそれをツマミに釣り談義に花を咲かせている。
 ・・・そしてそのヨコでひたすら食べまくる親子。
 奈川って、素朴で美味しいものがたくさんあるんだね。ほっくり、シャッキリしたネマガリダケは醤油とマヨネーズをつけてぽりぽりと、いくらでも入ってしまう。
 スミちゃんの奥様がわざわざ用意してくださった、お焼きをアレンジしたと言うケーキは、地場の豆やチーズが入ってほんのり甘く、ムスメにもオオウケ。



 帰りの車の助手席で、疲れて眠ってしまったムスメ。車の中で釣りをした感想をお互いに話していたら、彼女は今日釣りをした渓流を「きれいなところだったね〜。」と言っていた。
 
 まず、本日の目的は完璧に達成である。
 土や水から離れてしまった13歳が、徐々にでも、再びそれらに馴染んでくれることを願いつつ・・・


 ・・・ただ一つの心残りは、あのイワナでビールが飲めなかったこと
・・・ グスン。

スミちゃんの釣行記
川で遊ぼう
じねんのことはり