オオキンケイギク・特定外来生物法はなんのため



近所の堤防でタネをつけたオオキンケイギク

初夏を過ぎ、夏になって川沿いの堤防道路を車で走っていると鮮やかなオオキンケイギクの黄色い花が目にとびこんでくる。
暑いな~、きれいだな。あんな所でよく、がんばってるなぁ。などと思いながら眺めていたらある日の新聞に
「オオキンケイギクは特定外来生物に指定されていました」
という記事が載っていた。2月に指定されたそうで、…えっ、知らなかった。何でもっと大々的に広報しなかったの??(それでも気が付かなかった可能性も否定できませんが…)

乾燥に耐えてしっかりと根を張ってくれるオオキンケイギクは、明治時代に日本にやってきて、つい最近まで公共工事の緑化に多く使われてきた。河川敷や法面の緑化にノシバなどを使うより、花も咲いてきれいという理由から重宝されたのだろう。
でもキクの仲間はよく増えるのだ。根は残る、そして根でも種でも増える。
私は庭に小菊を植えているが、放っておくと通路と言わず隣地と言わず顔を出すので、ちょこちょこと抜き取っている。

ブラックバス、ニセアカシア、同じ運命を辿ってきている生き物は数知れない。
騒がれると標的にされるが私たちの周りにはたくさんの「外来」さんたちが根付き、種を飛ばし、卵を産んでいる。けれどこれもまた「今の自然」。
そうでないと言うのなら、総ての貿易は禁止、ガーデニングも庭作りも禁止、海外旅行も禁止、海外の種通販ももちろん禁止して、山へ行くたびに裸になって全身消毒してから専用の衣服を着用しなければならない。

河川敷きのマレットゴルフ場などにオオキンケイギクを植え、自主的に管理していた市民や庭先で育てていた人たちはさぞ、混乱しているだろう。
だって「特定外来生物」は栽培はもちろん運搬(移動)、保管が禁じられる。悪質(ってこの場合はなんだ?)な違反をした場合は個人の場合懲役3年以下または3百万円以下の罰金刑なのだ。

せっかく植えて、今きれいに花が咲いているのに…
この花だけを残して一生懸命草取りもしてきたのに…
引っ張ったって簡単に抜けないよ…。
そんな市民の戸惑いのつぶやきが聞こえてきそうだ。

しかし、国を挙げて「特定外来生物」だと決めたわけであるからして、行政は公共工事で使い続けてきたことの過ちを謝罪し、徹底して抜き取りを進める立場なのだ。…よね?
そしてもちろん私たちも、思慮なくこの丈夫で美しい花をただ眺めていたことを深く反省し、可哀想にと泣きながら庭先のオオキンケイギクを抜き取ってビニール袋に入れ厳重に処分しなければならない。…よね??そう、あのアレチウリみたいに。

貴重かつ希少な公園、烏川渓谷緑地を訪ねた時、公園内で出た木屑を使ったチップで舗装された園路にちょこりんと顔を出した1本のヒメジョオンを、公園の現場の職員が歩きながら抜いていた。
そのために歩いていたのではなく、講座のために同行していた方だった。
大勢の講習者の最後尾を歩きながら、誰の目にも止まらないところで、自然な動作でそれをしていた。

この公園は、ゲートもなければ入場料も取らない。だから靴を洗えとも、服を払えとも言われない。
僅か2、3人の現場の職員は、とりたてて「外来生物」について演説することもない。でも、そっと、そして確実に引き抜き、いつまでも手に持っていた。

私の庭にも、ヒメジョオンは毎年出てくる。抜いても抜いても出てくる。草丈は高く放っておくと相当大きく茂るが、小さな可愛らしい花で繊細な花びらも美しい。
この日歩いた私の靴にも服にも、ヒメジョオンの種がついていたかもしれない。でも、現場の職員たちはゲートも設けず靴も洗わせずに、ただ黙って「帰化植物」を引き抜いている。

何をもって「自然」とするのか、その判断は私にはできない。けれど私もヒメジョオンを抜いていた公園職員の彼女と同じ事を、同じような場所でならするだろう。でも道ばたに生えているヒメジョオンは抜かない。
行政が判断したにはそれなりの調査と理由と先見があったはずだ。まさか適当に決めたとは言わないだろう。でもそうとしか思えないお役所の発言に、思わず腹が立つ。

最近ペルー、東南アジア原産のヒメイワダレソウというのがガーデニングでも田んぼの土手にも緑化工事でも重宝されているみたいだけれど、あれは大丈夫なのだろうか。相当すごい繁殖力があるらしい。
種をつけなければ大丈夫なのか?本当に??私は大変疑わしいと思っている。
植物が生きようとする力を、侮ってはならないのだ。

「特定外来生物」、次に指定されるのは何だろう?「ヒメジョオン」とか言われたら、草取り、サボれないかも。


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